バイオグラフィー

湖畔に浮かぶ小舟と、橋でつながるドーム型の塔を描いた線画イラスト

湖へ続く森の道

湖畔の丘陵に広がる田園の町、ラコルダム。

フィリックスはラコルダム北部の労働者階級の家に、三人兄弟の末子として生まれました。

日も昇らない朝早くに、父と母、そして年の離れた兄二人は働きに出ていきますから、幼い頃はもっぱら山手の祖父母の家に預けられておりました。

初等学校に入ると、フィリックスは天文や鉱物、生物などに興味を持ち、放課後は決まってスケッチブック片手に森を踏み分け、木こりの家を訪ねるようになりました。

数理科学研究科(Institute for Mathematical Sciences)の正面入口を描いたレンガ造りの建物の線画イラスト

星明かりの学窓

十二になる頃には数学や文学、音楽にも興味を持ち、ソルハンプトンへ出稼ぎに行った兄二人の援助もあり中等学校に進学することができました。

フィリックスは少しでも家計を助けようと朝晩に活字拾いの仕事を始めましたが、決して勉学を疎かにすることはなく、寸暇を惜しんで学問に打ち込みました。

中等学校を首席で卒業したフィリックスは、コルパドック先生の推薦を受けてオルドリバー財団の奨学金を獲得し、オークパドリー学術院への進学を果たしました。

数理科学研究科のカポリ先生のもとで数学と天文学の指導を受け学術院を修了した後は、メルチャイルド銀行にリスク計算手としての働き口を見つけ、僅かにゆとりのある生活を送れるようになりました。

木造のアトリエ内に作業台が並ぶ、屋根梁の見える線画イラスト

薄明のアトリエ

疫病と冷害の年、取り付け騒ぎの人波に揉まれメルチャイルド銀行が経営破綻。

その煽りを受け、一家は長年暮らしてきたフラッツからの退去を余儀なくされ、フィリックスは父母と共にマルブリックの公営団地へ移り住むこととなりました。

職を失ったフィリックスはしばらく日雇いで食い扶持を繋いだ後、学術院の友人アルベルトの伝手でマルブリックのアートカレッジに常任講師として迎えられました。

昼間は工芸科のアトリエで学生に電磁気の講義を行い、夜間には美術科の有志学生を集めて代数幾何のセミナー指導を行いました。

そして二十五になる年、フィリックスは教え子たちを引き連れ、空き家となった祖父母の家で小さな商店を始めました。